法益権衡の原則とは、
刑法上の緊急避難の成立要件として、
その行為によって生じた害が
避けようとした害の程度を
超えないことが必要とする原則です。
刑法37条1項は次のように規定しています。
自己又は他人の生命、身体、自由又は
財産に対する現在の危難を避けるため、
やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が
避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。
ただし、その程度を超えた行為は、情状により、
その刑を減軽し、又は免除することができる。
「超えないこと」が要件となりますので、
生じた害と避けようとした害が
同価値の場合も緊急避難は認められます。
ですので、自分の生命を守るために、
他人の生命を犠牲にしても、
緊急避難は成立し得ることになります。
ただし、刑法37条1項は、
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
と規定していますので、
業務上特別の義務がある者、
例えば、警察官、消防職員、医師、看護師等が
業務の性質上、一定の危難に身をさらす義務を負い、
義務の範囲内では、一般人と同様に、
緊急避難を行うことができないとするものですが、
一切の緊急避難が禁ぜられているわけでありません。
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