私立学校の教育内容や指導方法の変更と損害賠償請求

(平成21年12月10日最高裁)

事件番号  平成20(受)284

 

この裁判では、

 学校による生徒募集の際に説明,宣伝された

教育内容や指導方法の一部が変更され,

これが実施されなくなったことが,親の期待,

信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成するかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

親は,子の将来に対して最も深い関心を持ち,かつ,

配慮をすべき立場にある者として,子の教育に対する一定の支配権,

すなわち子の教育の自由を有すると認められ,

このような親の教育の自由は,

主として家庭教育等学校外における教育や

学校選択の自由にあらわれるものと考えられる

(最高裁昭和43年(あ)第1614号

同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁参照)。

 

そして,親の学校選択の自由については,その性質上,

特定の学校の選択を強要されたり,これを妨害されたりするなど,

学校を選択する際にその侵害が問題となり得るものであって,

親が子を入学させる学校を選択する際に考慮した

当該学校の教育内容や指導方法

(以下,両者を併せて「教育内容等」という。)が

子の入学後に変更されたとしても,

学校が教育内容等の変更を予定しながら,

生徒募集の際にそのことを秘して従来どおりの教育を行う旨

説明,宣伝したなどの特段の事情がない限り,

親の学校選択の自由が侵害されたものということはできない

 

本件において,上記特段の事情についての主張立証はなく,

上告人が,生徒募集の際に説明,宣伝した教育内容等を

被上告人らの子の入学後に変更し,

その結果学内に混乱が生じたからといって,

被上告人らの学校選択の自由を抱くものではないし,

同様の期待,信頼を抱いた親であっても,

ある教育内容等が変更されたことにより,その期待,

信頼が損なわれたと感じるか否かは,

必ずしも一様とはいえない。

 

そうすると,特定の親が,子の入学後の教育内容等の変更により,

自己の抱いていた期待,信頼が損なわれたと感じたからといって,

それだけで直ちに上記変更が当該親に対する

不法行為を構成するものということはできない

 

また,学校教育における教育内容等の決定は,

当該学校の教育理念,生徒の実情,物的設備・施設の設置状況,

教師・職員の配置状況,財政事情等の各学校固有の事情のほか,

学校教育に関する諸法令や学習指導要領との適合性,

社会情勢等,諸般の事情に照らし,

全体としての教育的効果や特定の教育内容等の実施の可能性,

相当性,必要性等を総合考慮して行われるものであって,

上記決定は,学校教育に関する諸法令や

学習指導要領の下において,教育専門家であり

当該学校の事情にも精通する学校設置者や

教師の裁量にゆだねられるべきものと考えられる。

 

そして,教育内容等については,

上記諸般の事情の変化をも踏まえ,

その教育的効果等の評価,検討が不断に行われるべきであり,

従前の教育内容等に対する評価の変化に応じて

これを変更することについても,

学校設置者や教師に裁量が認められるべきものと考えられる。

 

したがって,学校による生徒募集の際に説明,

宣伝された教育内容等の一部が変更され,

これが実施されなくなったことが,親の期待,

信頼を損なう違法なものとして不法行為を構成するのは,

当該学校において生徒が受ける教育全体の中での

当該教育内容等の位置付け,当該変更の程度,

当該変更の必要性,合理性等の事情に照らし,

当該変更が,学校設置者や教師に上記のような

裁量が認められることを考慮してもなお,

社会通念上是認することができないものと

認められる場合に限られるというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例コーナートップへ


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事