宮崎家族3人殺害事件
(平成26年10月16日最高裁)
事件番号 平成24(あ)736
最高裁判所の見解
本件は,被告人が,早朝,自宅において,
同居していた長男(当時生後5か月),
妻(当時24歳)及び義母(妻の実母,当時50歳)の3名を
殺害し,その後,長男の死体を土中に遺棄したという殺人,
死体遺棄の事案である。
その経緯,動機は,被告人が,本件の約1年前に
妻と結婚した当初から義母とも同居していたところ,
義母が,被告人に対して,説教や,叱責,
非難を繰り返すことに嫌気がさし,
義母との同居生活から逃れたいと思い悩んだ末に,
その手段として義母を殺害しようと考え,
そのことによる逮捕を免れるためには妻も殺害するほかなく,
乳児である長男も妻と一体であると考えて,
家族3人の殺害を決意したというものである。
被告人に対する義母の言動には,結婚前後のことなど,
被告人としては既に解決したと考えていた問題を
繰り返し引き合いに出して非難するものや,
被告人の両親に対する非難を理不尽に被告人に向けるものがあり,
その口調も激しいものであったから,
若年の被告人がうまく対処できず,義母から逃れたいと
考えたこと自体には同情の余地があるものの,
そのような事情で義母を殺害し,
さらに妻子の殺害まで決意するというのは,
余りに短絡的であるし,自らの自由を手に入れるために
家族3人を殺害したという点で,甚だ身勝手なものである。
各殺害の態様も,長男については,
その頸部を両手で絞め付けて瀕死の状態にした上,
全身を浴槽の水中に沈めて窒息死させたものであり,
妻については,その就寝中に洋包丁を手にして襲いかかり,
目を覚ましたところを,その頸部を同包丁で突き刺し,
助けを求める声を上げても意に介さずに,
後頭部をハンマーで5回くらい殴打し,
頭蓋骨を粉砕して脳挫滅により死亡させたものであり,
義母についても,目を覚まし立ち上がっていたところを,
その頭頂部にハンマーを振り下ろして殴打した上,
倒れてからも後頭部を更にハンマーで3回くらい殴打し,
頭蓋骨を粉砕して脳挫滅により死亡させたもので,いずれも,
強固な殺意に基づく,執拗で,残虐なものである。
また,被告人は,本件の数日前に3名の殺害を決意し,
その方法を考えた上で,犯行前夜には職場の倉庫から
上記ハンマーを持ち帰るなどしており,
本件は相当に計画的な犯行であるし,3名殺害後は,
勤務先の資機材置場に穴を掘って,
長男の死体を埋めて遺棄したほか,
埋めきれなかった妻と義母については,
強盗犯人に殺害されたと装うべく,
部屋が荒らされた様子を作出し,貴重品を持ち出して
草むらに隠匿するなどもしており,殺害後の情状も悪い。
3名の殺害という結果は誠に重大であり,
義母の母ら遺族が厳しい処罰感情を
示しているのも無理からぬことである。
以上の事情を踏まえると,被告人が義母から
逃れたいと考えたこと自体には同情の余地があること,
被告人に前科はなく,犯罪性向が強いとはいえないこと,
被告人が反省の態度を示していることなど,
被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,
その刑事責任は誠に重大であり,
被告人を死刑に処した第1審判決を維持した原判断は,
当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
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