JR北海道・日本貨物鉄道事件

(平成15年12月22日最高裁)

事件番号  平成13(行ヒ)96

 

この裁判では、国鉄からJRへ民営化された際の、

採用差別が不当労働行為にあたるかについて裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

改革法は,国鉄が上記振り分けに当たって採用候補者として

選定せず採用候補者名簿に記載しなかったため承継法人の職員として

採用されなかった国鉄の職員については,国鉄との間で雇用契約関係を存続させ,

国鉄が事業団に移行するのに伴い事業団の職員とし,

事業団との間に雇用契約関係を存続させることとしたが,

この措置は,事業団の職員となった者について特措法により

移行日から3年内に再就職を図るものとしてその間に

再就職の準備をさせることとしたものであり,

雇用契約関係終了に向けての準備期間を置くことを目的としたものである。

 

承継法人の職員に採用されず国鉄の職員から事業団の職員の地位に移行した者は,

承継法人の職員に採用された者と比較して不利益な立場に置かれることは明らかである。

 

そうすると,仮に国鉄が採用候補者の選定及び

採用候補者名簿の作成に当たり組合差別をした場合には,

国鉄は,その職員に対し,労働組合法7条1号が禁止する

労働組合の組合員であることのゆえをもって

不利益な取扱いをしたことになるというべきであり,

国鉄,次いで事業団は,その雇用主として同条にいう

「使用者」としての責任を免れないものというべきである。

他方,改革法は,前記のとおり,

所定の採用手続によらない限り承継法人設立時に

その職員として採用される余地はないこととし,

その採用手続の各段階における国鉄と設立委員の権限については,

これを明確に分離して規定しており,

このことに改革法及び関係法令の規定内容を併せて考えれば,

改革法は,設立委員自身が不当労働行為を行った場合は別として,

専ら国鉄が採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成に当たり

組合差別をしたという場合には,労働組合法7条の適用上,

専ら国鉄,次いで事業団にその責任を

負わせることとしたものと解さざるを得ず,

このような改革法の規定する法律関係の下においては,

設立委員ひいては承継法人が同条にいう「使用者」として

不当労働行為の責任を負うものではないと解するのが相当である。

 

企業者は,経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し,

自己の営業のために労働者を雇用するに当たり,

いかなる者を雇い入れるか,いかなる条件でこれを雇うかについて,

法律その他による特別の制限がない限り,

原則として自由にこれを決定することができるものであり,

他方,企業者は,いったん労働者を雇い入れ,

その者に雇用関係上の一定の地位を与えた後においては,

その地位を一方的に奪うことにつき,

雇入れの場合のような広い範囲の自由を有するものではない

 

そして,労働組合法7条1号本文は,

「労働者が労働組合の組合員であること,労働組合に加入し,

若しくはこれを結成しようとしたこと

若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって,

その労働者を解雇し,その他これに対して不利益な取扱をすること」

又は「労働者が労働組合に加入せず,

若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること」

を不当労働行為として禁止するが,

雇入れにおける差別的取扱いが前者の類型に含まれる旨を

明示的に規定しておらず,雇入れの段階と雇入れ後の段階とに

区別を設けたものと解される。

そうすると,雇入れの拒否は,それが従前の雇用契約関係における

不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に

当たるなどの特段の事情がない限り,労働組合法7条1号本文にいう不利益な

取扱いに当たらないと解するのが相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

労働法判例の要点をわかりやすく解説コーナートップへ


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事