公判調書の整理期間を定める刑訴法48条3項と憲法31条
(平成27年8月25日最高裁)
事件番号 平成26(あ)1045
この裁判では、
公判調書の整理期間を定める刑訴法48条3項と
憲法31条について裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
現行刑訴法は,争点を中心とする充実した審理を集中的・連続的に行うため,
できる限り,連日開廷し,継続して審理することを目指しており
(同法281条の6第1項),検察官,被告人又は弁護人による
証拠調べ後の意見陳述についても,意見と証拠との関係を
具体的に明示して行うとともに,証拠調べ後できる限り
速やかに行うことが求められている(刑訴規則211条の2,211条の3)。
これは,公判調書が未だ整理されず
閲覧謄写することができない段階においても,
公判廷で直接取り調べた証拠に基づいて意見陳述をすることが
可能であることを前提としているものといえる
(同法382条等が,控訴趣意書に,訴訟記録及び原裁判所において
取り調べた証拠に現れている事実の援用を求めているのとは異なる。)。
一方,公判調書は,検察官,被告人又は弁護人による
訴訟活動の準備のために実務上有効な機能を果たす場合があることから,
各公判期日後,速やかにこれを整理することが求められている。
しかし,正確な公判調書を作成し整理するに当たっては
ある程度の日時を要することは避けられないところ,
そのために集中審理の実現が妨げられるということは
刑訴法の想定するものではない。
同法48条3項は,これらの事情を考慮し,
公判調書の整理期間を規定したものである。
このような刑訴法等の規定を統一的に解釈すれば,
同法48条1項により公判調書を作成する本来の目的は,
公判期日における審判に関する重要な事項を明らかにし,
その訴訟手続が法定の方式に従い適式に
行われたかどうかを公証することによって,
訴訟手続の公正を担保することや,上訴審に
原判決の当否を審査するための資料を提供することなどにあると解される。
(3) そうすると,上記の公判調書を作成する本来の目的等を踏まえ,
公判調書を整理すべき期間を具体的にどのように定めるかは,
憲法31条の刑事裁判における適正手続の保障と
直接には関係のない事項である。
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