裁判員裁判における審理及び裁判の特例である区分審理制度は憲法37条1項に違反するか

(平成27年3月10日最高裁)

事件番号  平成25(あ)755

 

この裁判では、

 裁判員裁判における審理及び裁判の特例である区分審理制度は,

憲法37条1項に違反するかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

裁判員法は,同一の被告人について,

裁判員の参加する合議体で

取り扱うべき事件を含む複数の被告事件の弁論を併合した場合において,

裁判員の負担に関する事情を考慮し,

その円滑な選任又は職務の遂行を確保するため

特に必要があると認められるときは,

相当でないと認められるときを除き,

併合した事件のうちの一部の事件を区分し,順次,

この区分した事件(区分事件)ごとに審理する旨の

区分審理決定をすることができることとしている(同法71条1項)。

 

この決定をした場合には,区分事件ごとに審理を担当する

裁判員を選任して審理し,同法78条,79条に定める

部分判決を行わなければならず(区分事件審判),

区分事件審判に係る職務を行う裁判員の任務は,

当該区分事件について部分判決の宣告をしたときに

終了するものとされ(同法84条1号),

最後の事件を審判する合議体

(新たに選任された裁判員が加わった合議体)は,

区分事件以外の事件を審理するとともに,

区分事件に関しては部分判決を前提に必要な審理をし,

併合した事件全体について裁判を

行わなければならない(併合事件審判)とされている(同法86条1項)。

 

区分審理制度は,裁判員裁判における審理及び

裁判の特例であるところ,区分事件審判及び

併合事件審判のそれぞれにおいて,

身分保障の下,独立して職権を行使することが保障された裁判官と,

公平性,中立性を確保できるよう配慮された手続の下に

選任された裁判員とによって裁判体が構成されていることや,

裁判官が裁判の基本的な担い手とされていること等は,

区分審理決定がされていない裁判員裁判の場合と何ら変わるところはない。

 

また,区分事件審判を行う裁判体と併合事件審判を行う裁判体では,

裁判員の構成が異なり,併合事件審判においては,

部分判決で判断が示された事項については,

原則としてこれによるものとされているが(同法86条2項),

区分審理制度は,事件が併合されていることを

前提としながら事件を区分し,

区分した事件について順次審理,判決するものであるから,

区分事件審判を担当する裁判体と

併合事件審判を担当する裁判体とは,

裁判員が新たに選任されてその構成は異なるものの,

事件を併合して審判する訴訟法上の裁判所における

裁判体の構成の一部変更とみることができ,

先行の区分事件審判の裁判体の示した判断を前提に

後行の裁判体が裁判所としての終局判決をすることは,

制度的に妨げられるものではない。そして,

併合事件審判を担当する裁判体は,

部分判決で示された事項によるだけでなく,

併合事件審判をするのに必要な範囲で,

区分事件の公判手続を更新して証拠を

取り調べなければならないとされており(同法87条),

区分事件の審理手続や部分判決に重大な瑕疵がある場合等には,

当該部分判決によらずに(同法86条2項,3項),

区分事件の審理をしなければならないとされている。

 

以上によれば,区分審理制度においては,

区分事件審判及び併合事件審判の全体として

公平な裁判所による法と証拠に基づく

適正な裁判が行われることが

制度的に十分保障されているといえる

 

したがって,区分審理制度は憲法37条1項に違反せず,

このように解すべきことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)

第171号同23年5月5日大法廷判決・

刑集2巻5号447頁,同平成22年(あ)第1196号

同23年11月16日大法廷判決・刑集65巻8号1285頁)及び

その趣旨に徴して明らかである。所論は理由がない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事