民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」
(平成26年4月24日最高裁)
この裁判では、
民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
(1) 人事に関する訴え以外の訴えにおける
間接管轄の有無については,
基本的に我が国の民訴法の定める
国際裁判管轄に関する規定に準拠しつつ,
個々の事案における具体的事情に即して,
外国裁判所の判決を我が国が承認するのが
適当か否かという観点から,
条理に照らして判断すべきものと解するのが相当である。
(2) そこで,まず,我が国の民訴法の定める
国際裁判管轄に関する規定をみると,
民訴法3条の3第8号は,「不法行為に関する訴え」については
「不法行為があった地」を基準として
国際裁判管轄を定めることとしている。
民訴法3条の3第8号の「不法行為に関する訴え」は,
民訴法5条9号の「不法行為に関する訴え」と同じく,
民法所定の不法行為に基づく訴えに限られるものではなく,
違法行為により権利利益を侵害され,
又は侵害されるおそれがある者が
提起する差止請求に関する訴えをも含むものと解される
(最高裁平成15年(許)第44号同16年4月8日
第一小法廷決定・民集58巻4号825頁参照)。
そして,このような差止請求に関する訴えについては,
違法行為により権利利益を侵害されるおそれがあるにすぎない者も
提起することができる以上は,民訴法3条の3第8号の
「不法行為があった地」は,違法行為が行われるおそれのある地や,
権利利益を侵害されるおそれのある地をも
含むものと解するのが相当である。
(3) ところで,民訴法3条の3第8号の規定に依拠して
我が国の国際裁判管轄を肯定するためには,
不法行為に基づく損害賠償請求訴訟の場合,原則として,
被告が日本国内でした行為により原告の権利利益について
損害が生じたか,被告がした行為により原告の権利利益について
日本国内で損害が生じたとの客観的事実関係が証明されれば足りる
(最高裁平成12年(オ)第929号,同年(受)第780号
同13年6月8日第二小法廷判決・民集55巻4号727頁参照)。
そして,判決国の間接管轄を肯定するためであっても,
基本的に民訴法3条の3第8号の規定に準拠する以上は,
証明すべき事項につきこれと別異に解するのは
相当ではないというべきである。
そうすると,違法行為により権利利益を侵害され,
又は侵害されるおそれがある者が
提起する差止請求に関する訴えの場合は,
現実の損害が生じたことは必ずしも
請求権発生の要件とされていないのであるから,
このような訴えの場合において,
民訴法3条の3第8号の「不法行為があった地」が
判決国内にあるというためには,仮に被告が原告の権利利益を
侵害する行為を判決国内では行っておらず,
また原告の権利利益が判決国内では現実に侵害されていないとしても,
被告が原告の権利利益を侵害する行為を判決国内で行うおそれがあるか,
原告の権利利益が判決国内で侵害されるおそれがあるとの
客観的事実関係が証明されれば足りるというべきである。
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