公務員に対する懲戒処分の適否に関する裁判所の審査
(昭和52年12月20日最高裁)
事件番号 昭和47(行ツ)52
この裁判では、
公務員に対する懲戒処分の適否に関する裁判所の審査について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
公務員に対する懲戒処分は、当該公務員に職務上の義務違反、
その他、単なる労使関係の見地においてではなく、
国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することを
その本質的な内容とする勤務関係の見地において、
公務員としてふさわしくない非行がある場合に、
その責任を確認し、公務員関係の秩序を維持するため、
科される制裁である。
ところで、国公法は、同法所定の懲戒事由がある場合に、
懲戒権者が、懲戒処分をすべきかどうか、また、
懲戒処分をするときにいかなる処分を
選択すべきかを決するについては、
公正であるべきこと(74条1項)を定め、
平等取扱いの原則(27条)及び
不利益取扱いの禁止(98条3項)に
違反してはならないことを定めている以外に、
具体的な基準を設けていない。
したがって、懲戒権者は、
懲戒事由に該当すると認められる行為の
原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、
当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の
処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える
影響等、諸般の事情を考慮して、
懲戒処分をすべきかどうか、また、
懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、
を決定することができるものと考えられるのであるが、
その判断は、右のような広範な事情を
総合的に考慮してされるものである以上、
平素から庁内の事情に通暁し、
都下職員の指揮監督の衝にあたる者の裁量に任せるのでなければ、
とうてい適切な結果を期待することが
できないものといわなければならない。
それ故、公務員につき、
国公法に定められた懲戒事由がある場合に、
懲戒処分を行うかどうか、
懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは、
懲戒権者の裁量に任されているものと解すべきである。
もとより、右の裁量は、懇意にわたることを
得ないものであることは当然であるが、
懲戒権者が右の裁量権の行使としてした懲戒処分は、
それが社会観念上著しく妥当を欠いて
裁量権を付与した目的を逸脱し、
これを濫用したと認められる場合でない限り、
その裁量権の範囲内にあるものとして、
違法とならないものというべきである。
したがって、
裁判所が右の処分の適否を審査するにあたっては、
懲戒権者と同一の立場に立って
懲戒処分をすべきであったかどうか又は
いかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、
その結果と懲戒処分とを比較して
その軽重を論ずべきものではなく、
懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が
社会観念上著しく妥当を欠き、
裁量権を濫用したと認められる場合に限り
違法であると判断すべきものである。
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