在留期間の更新についての判断と法務大臣の裁量権

(昭和53年10月4日最高裁)

事件番号  昭和50(行ツ)120

 

この裁判では、

出入国管理令21条3項に基づく在留期間の更新を

適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断と

法務大臣の裁量権の裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を

保障する旨を規定するにとどまり、

外国人がわが国に入国することについては

なんら規定していないものであり、

このことは、国際慣習法上、

国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、

特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、

これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、

当該国家が自由に決定することができるものとされていることと、

その考えを同じくするものと解される。

 

したがって、憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を

保障されているものでないことはもちろん、

所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを

要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。

 

そして、上述の憲法の趣旨を前提として、

法律としての効力を有する出入国管理令は、

外国人に対し、一定の期間を限り特定の資格により

わが国への上陸を許すこととしているものであるから、

上陸を許された外国人は、その在留期間が経過した場合には

当然わが国から退去しなければならない。

 

もっとも、出入国管理令は、

当該外国人が在留期間の延長を希望するときには

在留期間の更新を申請することができることとしているが、

その申請に対しては法務大臣が

「在留期間の更新を適当と認めるに足りる

相当の理由があるときに限り」

これを許可することができるものと定めている(同条3項)のであるから、

出入国管理令上も在留外国人の在留期間の更新が権利として

保障されているものでないことは、明らかである。

 

処分が違法となるのは、

それが法の認める裁量権の範囲をこえ又は

その濫用があった場合に限られるのであり、また、

その場合に限り裁判所は当該処分を取り消すことができるものであって、

行政事件訴訟法30条の規定は

この理を明らかにしたものにほかならない。

 

もっとも、法が処分を行政庁の裁量に任せる

趣旨、目的、範囲は各種の処分によって一様ではなく、

これに応じて裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして

違法とされる場合もそれぞれ異なるものであり、

各種の処分ごとにこれを検討しなければならないが、

これを出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の

「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」

があるかどうかの判断の場合についてみれば、

右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、

その判断が全く事実の基礎を欠き又は

社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、

裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして

違法となるものというべきである。

 

したがって、裁判所は、法務大臣の右判断について

それが違法となるかどうかを審理、判断するにあたっては、

右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、

その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により

右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、

又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により

右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが

明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、

右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして

違法であるとすることができるものと解するのが、相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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