課税処分と国家賠償
(平成22年6月3日最高裁)
事件番号 平成21(受)1338
この裁判では、
課税処分と国家賠償について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
国家賠償法1条1項は,
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が,
その職務を行うについて,故意又は過失によって
違法に他人に損害を加えたときは,国又は公共団体が,
これを賠償する責に任ずる。」と定めており,
地方公共団体の公権力の行使に当たる公務員が,
個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して
当該国民に損害を加えたときは,当該地方公共団体が
これを賠償する責任を負う。
435条1項の規定は,固定資産課税台帳に登録された
価格自体の修正を求める手続に関するものであって,
当該価格の決定が公務員の職務上の
法的義務に違背してされた場合における
国家賠償責任を否定する根拠となるものではない。
行政処分が違法であることを理由として
国家賠償請求をするについては,
あらかじめ当該行政処分について取消し又は
無効確認の判決を得なければならないものではない。
このことは,当該行政処分が
金銭を納付させることを直接の目的としており,
その違法を理由とする国家賠償請求を認容したとすれば,
結果的に当該行政処分を取り消した場合と
同様の経済的効果が得られるという場合であっても
異ならないというべきである。
したがって,たとい固定資産の価格の決定及び
これに基づく固定資産税等の賦課決定に
無効事由が認められない場合であっても,
公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して
当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは,
これによって損害を被った当該納税者は,
地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び
同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく,
国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。
また,記録によれば,本件倉庫の設計図に
「冷蔵室(-30℃)」との記載があることや
本件倉庫の外観からもクーリングタワー等の
特徴的な設備の存在が容易に確認し得ることがうかがわれ,
これらの事情に照らすと,原判決が説示するような理由だけでは,
本件倉庫を一般用の倉庫等として評価して
その価格を決定したことについて名古屋市長に
過失が認められないということもできない。
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