家事審判の非公開・非対審の合憲性

(昭和40年6月30日最高裁)

事件番号  昭和37(ク)243

 

夫Yと別居中の妻Xが、

Yのところに帰りたいとの同居を希望するものの、

Yがこれを拒絶しました。

 

離婚の意思のないXは、

Yを相手に同居の審判を申し立てました。

 

裁判所は家事審判手続きで、

「Yはその住居でXと同居しなければならない」

と審判をしました。

 

Yは抗告しましたが、棄却されたので、

原審判は憲法が規定する対審の原則、公開の原則に

違反すると主張し、最高裁に特別抗告しました。

 

最高裁判所の見解

家事審判法9条1項乙類3号に規定する

婚姻費用分担に関する処分は、民法760条を承けて、

婚姻から生ずる費用の分担額を具体的に形成決定し、

その給付を命ずる裁判であって、

家庭裁判所は夫婦の資産、収入その他

一切の事情を考慮して、後見的立場から、合目的の見地に立って、

裁量権を行使して、その具体的分担額を決定するもので、

その性質は非訟事件の裁判であり、

純然たる訴訟事件の裁判ではない

従って、公開の法廷における対審及び

判決によってなされる必要はなく

右家事審判法の規定に従ってした本件審判は

何ら右憲法の規定に反するものではない

 

しかして、過去の婚姻費用の分担を命じ得ないとする所論は、

原決定の単なる法令違反を主張するにすぎないから、

特別抗告の適法な理由とならないのみならず、

家庭裁判所が婚姻費用の分担額を決定するに当り、

過去に遡って、その額を形成決定することが許されない理由はなく、

所論の如く将来に対する婚姻費用の分担のみを命じ得るに過ぎないと

解すべき何らの根拠はない。

 

婚姻費用の分担に関する審判は、

夫婦の一方が婚姻から生ずる費用を

負担すべき義務あることを前提として、

その分担額を形成決定するものであるが、

右審判はその前提たる費用負担義務の存否を

終局的に確定する趣旨のものではない。

 

これを終局的に確定することは正に純然たる訴訟事件であって、

憲法82条による公開法廷における対審及び判決によって

裁判さるべきものである。

 

本件においても、

かかる費用負担義務そのものに関する争であるかぎり、

別に通常訴訟による途が閉されているわけではない

 

これを要するに、前記家事審判法の審判は、

かかる純然たる訴訟事件に属すべき事項を

終局的に確定するものではないから、

憲法82条、32条に反するものではない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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