不動産の二重売買と所有権の取得時効の起算点

(昭和46年11月5日最高裁)

事件番号  昭和42(オ)468

 

 

最高裁判所の見解

不動産の売買がなされた場合、特段の意思表示がないかぎり、

不動産の所有権は当事者間においてはただちに買主に移転するが、

その登記がなされない間は、登記の欠缺を主張するにつき

正当の利益を有する第三者に対する関係においては、

売主は所有権を失うものではなく、反面、

買主も所有権を取得するものではない。

 

当該不動産が売主から第二の買主に二重に売却され、

第二の買主に対し所有権移転登記がなされたときは、

第二の買主は登記の欠缺を主張するにつき

正当の利益を有する第三者であることはいうまでもないことであるから、

登記の時に第二の買主において完全に所有権を取得するわけであるが、

その所有権は、売主から第二の買主に直接移転するのであり、

売主から一旦第一の買主に移転し、第一の買主から

第二の買主に移転するものではなく、

第一の買主は当初から全く所有権を

取得しなかったことになるのである。

 

したがって、第一の買主がその買受後不動産の占有を取得し、

その時から民法162条に定める時効期間を経過したときは、

同法条により当該不動産を時効によって

取得しうるものと解するのが相当である。

 

してみれば、上告人の本件各土地に対する取得時効については、

上告人がこれを買い受けその占有を

取得した時から起算すべきものというべきであり、

二重売買の問題のまだ起きていなかつた当時に取得した

上告人の本件各土地に対する占有は、特段の事情の認められない以上、

所有の意思をもって、善意で始められたものと推定すべく、

無過失であるかぎり、時効中断の事由がなければ、

前記説示に照らし、上告人は、その占有を始めた昭和27年2月6日から

10年の経過をもって本件各土地の所有権を時効によって

取得したものといわなければならない

(なお、時効完成当時の本件不動産の所有者である

被上告人は物権変動の当事者であるから、上告人は

被上告人に対しその登記なくして本件不動産の

時効取得を対抗することができるこというまでもない。)。

 

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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