パナソニックプラズマディスプレイ(パスコ)事件(黙示の労働契約の成否)

(平成21年12月18日最高裁)

事件番号  平成21(受)440

 

Xは、平成16年1月に家庭用電化製品の製造を請負うA社と

労働契約を締結し、A社とY社との業務請負契約に基づいて、

プラズマディスプレイパネル(PDP)

の製造を業とするY社のB工場で

Y社の指揮命令下で就労していました。

 

Xは、就労形態が実際には

業務請負ではなく労働者派遣であり、

いわゆる偽装請負にあたるとして、直接雇用するようY社に申し入れ、

Y社での就労を偽装請負であると労働局に告発し、

Y社は是正勧告を受け、A社はY社での業務請負から撤退しました。

 

A社は、XにB工場への異動を打診しましたが、

Xはこれを拒否し、平成17年7月20日に退職しました。

 

Y社は、Xからの直接雇用の要請を受けて、

1年4か月間の有期での直接契約の申し入れを行い、

期間についてはXが別途異議を

とどめる旨の意思表示を行いつつ、

上記契約期間での直接雇用契約を締結し、

同年8月2日、Xを有期で雇い入れることにしました。

 

Y社は、平成18年1月末日をもって、期間満了により、

Xとの雇用関係はしたとして従業員の就労を拒みました。

 

Xは、Y社に対し、期間の定めのない

雇用契約上の地位を有することの確認や

慰謝料支払いを求めて訴訟を提起しました。

 

一審はXの請求を棄却し、

原審はXの請求をほぼ認容し、Y社が上告しました。

 

最高裁判所の見解

請負契約においては、

請負人は注文者に対して仕事完成義務を負うが

請負人に雇用されている労働者に対する具体的な作業の指揮命令は

専ら請負人にゆだねられている。

 

よって、請負人による労働者に対する指揮命令がなく、

注文者がその場屋内において労働者に直接具体的な指揮命令をして

作業を行わせているような場合には、たとい請負人と注文者との間において

請負契約という法形式が採られていたとしても、

これを請負契約と評価することはできない。

 

そして、上記の場合において、注文者と労働者との間に

雇用契約が締結されていないのであれば、

上記3者間の関係は、労働者派遣法2条1号にいう

労働者派遣に該当すると解すべきである。

 

そして、このような労働者派遣も、それが労働者派遣である以上は、

職業安定法4条6項にいう労働者供給に該当する余地はない。

 

労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、

さらには派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、

仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、

特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と

派遣元との間の雇用契約が無効になることはないと解すべきである。

 

そして、XとA社の間の雇用契約を

無効と解すべき特段の事情はうかがわれないから、

両者間の雇用契約は有効に存在していたものと解すべきである

 

Y社はA社によるXの採用に関与していたとは

認められないというのであり、

XがA社から支給を受けていた給与等の額をY社が

事実上決定していたといえるような事情もうかがわれず、

かえって、A社は、XにB工場のデバイス部門から

他の部門に移るよう打診するなど、

配置を含む被上告人の具体的な就業態様を一定の限度で

決定し得る地位にあったものと認められるのであって、

Y社とXとの間において雇用契約関係が黙示的に

成立していたものと評価することはできない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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