小野運送事件(第三者行為災害と示談)

(昭和38年6月4日最高裁)事件番号  昭和37(オ)711

 

Y社の従業員のAは、Y社の自動車を運転中に、

Cに接触し、Cを負傷させ、CはAの使用者であるY社に、

約46万円の損害賠償を得ることになりました。

 

Y社とCの間で、

自動車損害賠償保障法に基づく給付金10万円と

慰謝料・治療費2万円をY社がCに支払い、

その他の損害賠償についてはいっさい放棄するという

示談が成立しました。

 

国は、Cからの労災保険給付の申請の際に、

この示談のことを聞いて、Cに対して

労働保険法に基づき給付される保険給付金約42万円のうち、

12万円を差し引いた30万円を支払いました。

 

国は労災保険法12条の4に基づき、

この給付額をY社に求償し、

Y社は示談によりCが損害賠償請求権を放棄した以上、

国がCに対し補償給付をしたとしても、

国がCに代位して請求できる金銭債権はないとして、

その支払いを拒否しました。

 

1審は国の請求を認容し、Y社が控訴して、

原審はY社の主張を認め、一審を取消し、国が上告しました。

 

最高裁判所の見解

労働者が第三者の行為により災害をこうむった場合に

その第三者に対して取得する損害賠償請求権は、

通常の不法行為上の債権であり、その災害につき

労働者災害補償保険法による保険が付せられているからといって、

その性質を異にするものとは解されない。

 

したがって、他に別段の規定がないかぎり、

被災労働者らは、私法自治の原則上、第三者が自己に対し負担する

損害賠償債務の全部又は一部を免除する自由を有する。

 

労働者災害補償保険法20条は、その一項において、

政府は、補償の原因である事故が、

第三者の行為によって生じた場合に保険給付をしたときは、

その給付の価額の限度で、補償を受けた者が第三者に対して

有する損害賠償請求権を取得する旨を規定するとともに、

その二項において、補償を受けるべきものが、当該第三者より

同一の事由につき損害賠償を受けたときは、

政府は、その価額の限度で

災害補償の義務を免れる旨を規定しており、

右二項は、単に、被災労働者らが

第三者から現実に損害賠償を受けた場合には、

政府もまた、その限度において

保険給付をする義務を免れる旨を明らかにしているに止まるが、

労災保険制度は、もともと、被災労働者らのこうむった損害を

補償することを目的とするものであることにかんがみれば、

被災労働者ら自らが、第三者の自己に対する

損害賠償債務の全部又は一部を免除し、

その限度において損害賠償請求権を喪失した場合においても、

政府は、その限度において保険給付をする義務を免れる

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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