三菱重工長崎造船所事件(ストライキの際の家族手当のカット)

(昭和56年9月18日最高裁)

事件番号  昭和51(オ)1273

 

この裁判では、

「ストライキの際に、家族手当を削減する」

という規則、取扱いが許されるのかについて

見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

上告会社のD造船所においては、

ストライキの場合における家族手当の削減が

昭和23年頃から昭和44年10月までは

就業規則(賃金規則)の規定に基づいて実施されており、

その取扱いは、同年11月賃金規則から右規定が削除されてからも、

細部取扱のうちに定められ、

上告会社従業員の過半数で組織されたF労働組合の意見を徴しており、

その後も同様の取扱いが引続き異議なく

行われてきたというのであるから、

ストライキの場合における家族手当の削減は、

上告会社と被上告人らの所属するE労組との間の

労働慣行となっていたものと推認することができるというべきである。

 

また、右労働慣行は、家族手当を割増賃金の基礎となる賃金に算入しないと定めた

労働基準法37条2項及び本件賃金規則25条の趣旨に照らして

著しく不合理であると認めることもできない

 

ストライキ期間中の賃金削減の対象となる部分の存否及び

その部分と賃金削減の対象とならない部分の区別は、

当該労働協約等の定め又は労働慣行の趣旨に照らし

個別的に判断するのを相当とし、

上告会社のD造船所においては、昭和44年11月以降も

本件家族手当の削減が労働慣行として成立していると

判断できることは前述したとおりであるから、

いわゆる抽象的一般的賃金二分論を前提とする被上告人らの主張は、

その前提を欠き、失当である。

 

所論引用の判例(最高裁昭和37年(オ)第14五2号同40年2月5日第二小法廷判決、

民集一九巻一号五二頁)は事案を異にし、本件に適切でない。

 

次に被上告人らは、本件家族手当の削減は、

(1) 労働基準法37条2項が割増賃金算定の基礎に

家族手当を算入しないとする法意並びに、

(2) 同法24条の規定にも違反する、と主張する。

 

しかし、同法37条2項が家族手当を割増賃金算定の基礎から

除外すべきものと定めたのは、家族手当が労働者の個人的事情に基づいて

支給される性格の賃金であって、これを割増賃金の基礎となる賃金に

算入させることを原則とすることがかえって

不適切な結果を生ずるおそれのあることを配慮したものであり、

労働との直接の結びつきが薄いからといって、

その故にストライキの場合における家族手当の削減を

直ちに違法とする趣旨までを含むものではなく

また、同法24条所定の賃金全額払の原則は、

ストライキに伴う賃金削減の当否の判断とは何ら関係がないから、

被上告人らの右主張も採用できない。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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