防衛の意思

昭和50年11月28日

事件番号  昭和49(あ)2786

被告人とその友人甲は自動車で走行中、

花火に興じているA、B、Cら3名の中の一人を

友人と間違って声をかけたところ、

3人に、「人違いをしてすみませんですむと思うか。」、

「海に放り込んでやろうか。」などと因縁をつけられました。

 

そして酒肴を強要されて、

飲食店で甲らに酒肴を奢らされました。

 

その後甲の運転する乗用車で3人を送り届けたところ、

3人は一斉に甲に襲い掛かり、執拗に暴行を続け、

被告人は、このまま放置しておけば、甲の生命が危いと思い、

自宅に駆け戻り、散弾銃に実包四発を装てんし、

銃を抱えて現場に駆け戻りました。

 

そこには甲の姿が見当たりませんでしたが、

3人のうちの一人のAがやってきて、

「殺してやる」などと言いながら追いかけてきたので、

被告人は逃げ出しましたが、Aに追いつかれそうに感じ、

Aが死亡するかもしれないことを認識しながら、

振り向きざまに散弾銃を発砲し、Aに命中させ、

全治4か月の怪我を負わせました。

 

この事件では正当防衛が成立するかどうかが注目されました。

 

一審は過剰防衛を認めましたが、

原審は一審を破棄し、被告人が上告しました。

 

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最高裁判所の見解

急迫不正の侵害に対し自己又は

他人の権利を防衛するためにした行為と認められる限り、

その行為は、同時に侵害者に対する

攻撃的な意思に出たものであっても、

正当防衛のためにした行為にあたると判断するのが、相当である。

 

すなわち、防衛に名を借りて侵害者に対し

積極的に攻撃を加える行為は、防衛の意思を欠く結果、

正当防衛のための行為と認めることはできないが、

防衛の意思と攻撃の意思とが併存している場合の行為は、

防衛の意思を欠くものではないので、

これを正当防衛のための行為と評価することができるからである、

しかるに、原判決は、他人の生命を救うために

被告人が銃を持ち出すなどの行為に出たものと認定しながら、

侵害者に対する攻撃の意思があったことを理由として、

これを正当防衛のための行為にあたらないと判断し、

ひいては被告人の本件行為を

正当防衛のためのものにあたらないと評価して、

過剰防衛行為にあたるとした第一審判決を破棄したものであって、

刑法36条の解釈を誤ったものというべきである。

 

(なお、差戻審では、Aからの被告人への追跡は

「急迫不正の侵害」にあたらないとして、

過剰防衛の成立は否定されました。)

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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