公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣

(平成24年4月20日最高裁)

事件番号  平成22(行ヒ)102

 

この裁判では、

市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し

公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する

法律所定の手続によらずに上記職員の

給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,

市長に過失の有無について裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件補助金等の支出は,派遣職員の給与の支給について

議会の関与の下に条例による適正な手続の確保等を図るために

その支給の方法等を法定した派遣法の定めに

違反する手続的な違法があり,無効であると解されるところ,

その支出当時の市長であったAの過失につき,以下検討する

 

派遣法は,6条2項において,

派遣職員が派遣先団体において従事する業務が

地方公共団体の委託を受けて行う業務等であって

その実施により当該地方公共団体の事務又は

事業の効率的又は効果的な実施が図られると

認められるものである場合等には,

条例で定めるところにより,派遣職員に給与を

支給することができる旨を規定しているが,

地方公共団体が派遣先団体等に支出した補助金等が

派遣職員等の給与に充てられることを

禁止する旨の明文の規定は置いていない。

 

また,記録によれば,

派遣法の制定の際の国会審議において,

地方公共団体が営利法人に支出した補助金が

当該法人に派遣された職員の給与に充てられることの許否に関する

質問に対し,自治政務次官が,

明確に否定的な見解を述べることなく

公益上の必要性等に係る

当該地方公共団体の判断による旨の答弁をしており,

派遣法の制定後,総務省の担当者も,

市や他の地方公共団体の職員に対し,

派遣先団体等における派遣職員等の給与に充てる

補助金の支出の適否については派遣法の適用関係とは別途に

判断される旨の説明をしていたこと,また,

本件補助金等の支出当時,市のほかにも多くの政令指定都市において,

派遣先団体等に支出された補助金等が派遣職員等の給与に

充てられていたことがうかがわれる。

 

さらに,法人等に派遣された職員の給与に

充てる補助金の支出の適法性に関しては,

派遣法の施行前に支出がされた事例に係る裁判例は

これを適法とするものと違法とするものに分かれており,

派遣法の施行後に支出がされた事例につき,

本件補助金等の支出の時点で,

派遣法と上記の補助金の支出の関係について

直接判断した裁判例はいまだ現れていなかった

 

これらの事情に照らすと,

本件補助金等の支出当時の市長であったAにおいて,

派遣法6条2項の規定との関係で,

本件各団体に対する本件補助金等の支出の適法性について

疑義があるとして調査をしなかったことが

その注意義務に違反するものとまではいえず,

その支出をすることが同項の規定又は

その趣旨に反するものであるとの認識に

容易に至ることができたとはいい難い。

 

そうすると,本件補助金等の支出当時の市長であったAにおいて,

自らの権限に属する財務会計行為の適法性に係る

注意義務に違反したとはいえず,また,

補助職員が専決等により行う財務会計上の違法行為を阻止すべき

指揮監督上の義務に違反したともいえないから,

本件補助金等の支出につきAに市長として

尽くすべき注意義務を怠った過失があったということはできない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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