行政処分の無効原因の重大明白な瑕疵

(昭和34年9月22日最高裁)

事件番号  昭和32(オ)252

 

この裁判では、

農地買収計画につき異議・訴願の提起があるにかかわらず、

これに対する決定・裁決を経ないで

爾後の手続を進行させたという違法は、

買収処分の無効原因となるかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件農地は、自創法5条5号により

買収除外の指定をすべき土地であり、

かように除外指定をなすべき土地を、

この指定をしないで買収することは、

買収処分の重大な違法事由を構成するものである。

 

また、買収に当って目的地が

右除外指定をなすべき土地であるということは

関係行政庁に明白であったはずであるから、

本件買収処分には明白な違法があるものと解すべきである。

 

従って、本件買収処分には重大・明白な違法があるものとして

当然無効と解すべきであるのに、原判決が上告人の無効原因として

主張した事実にっき何等審理することなく

本件買収処分を無効でないと判断したのは、

法令の解釈を誤り、審理不尽の違法に陥ったものである」

というにある。

 

しかし、自作農創設特別措置法5条5号により

買収除外の指定をすべきものを

この指定をしないで買収することは違法であり、

従って取消事由とはなるが、それだけでは、当然に、

重大・明白な瑕疵として無効原因となるわけではない

 

すなわち無効原因となる重大・明白な違法とは、

処分要件の存在を肯定する処分庁の認定に

重大・明白な誤認があると認められる場合を指すものと解すべきである。

 

たとえば、農地でないものを農地として買収することは違法であり、

取消事由となるが、それだけで、当然に、

無効原因があるといい得るものではなく、

無効原因があるというためには、

農地と認定したことに重大・明白な誤認がある場合

(たとえば、すでにその地上に堅固な建物の建っているような

純然たる宅地を農地と誤認して買収し、

その誤認が何人の目にも明白であるというような場合)

でなければならない。

 

従って、無効原因の主張としては、

誤認が重大・明白であることを具体的事実

(右の例でいえば地上に堅固な建物の建っているような

純然たる宅地を農地と誤認して買収したということ)

に基いて主張すべきであり、

単に抽象的に処分に重大・明白な瑕疵があると主張したり、

若しくは、処分の取消原因が当然に無効原因を

構成するものと主張することだけでは足りないと解すべきである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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