不法設置のヨット係留杭を法規に基づかずに強制撤去
(平成3年3月8日最高裁)
事件番号 平成1(行ツ)99
この裁判では、
漁港管理者である町が漁港水域内の不法設置に係る
ヨット係留杭を法規に基づかずに
強制撤去する費用を支出したことが違法となるかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
c町は、d漁港の区域内の水域における
障害を除去してその利用を確保し、
さらに地方公共の秩序を維持し、
住民及び滞在者の安全を保持する
(地方自治法二条三項一号参照)という任務を負っているところ、
同町の町長として右事務を処理すべき責任を有する上告人は、
右のような状況下において、船舶航行の安全を図り、
住民の危難を防止するため、
その存置の許されないことが明白であって、
撤去の強行によってもその財産的価値が
ほとんど損なわれないものと解される本件鉄杭を
その責任において強行的に撤去したものであり、
本件鉄杭撤去が強行されなかったとすれば、
千葉県知事による除却が同月9日以降になされたとしても、
それまでの間に本件鉄杭による航行船舶の事故及び
それによる住民の危難が生じないとは
必ずしも保障し難い状況にあったこと、
その事故及び危難が生じた場合の不都合、損失を考慮すれば、
むしろ上告人の本件鉄杭撤去の強行は
やむを得ない適切な措置であったと評価すべきである
(原審が民法720条の規定が
適用されない理由として指摘する諸般の事情は、
航行船舶の安全及び住民の急迫の危難の防止のため本件鉄杭撤去が
やむを得なかったものであることの認定を妨げるものとはいえない。)。
そうすると、上告人がc町の町長として
本件鉄杭撤去を強行したことは、
漁港法及び行政代執行法上適法と認めることのできないものであるが、
右の緊急の事態に対処するためにとられたやむを得ない措置であり、
民法720条の法意に照らしても、c町としては、
上告人が右撤去に直接要した費用を同町の経費として
支出したことを容認すべきものであって、
本件請負契約に基づく公金支出については、
その違法性を肯認することはできず、
上告人が浦安市に対し損害賠償責任を
負うものとすることはできないといわなければならない
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