登記簿上の取締役の第三者に対する責任
(昭和62年4月16日最高裁)
事件番号 昭和58(オ)678
この裁判では、辞任した取締役が、なお、
登記簿上に残存している場合の第三者に対する責任について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお
積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合を除いては、
辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて
当該株式会社と取引した第三者に対しても、
商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの、以下同じ。)
266条ノ3第1項前段に基づく
損害賠償責任を負わないものというべきであるが、
右の取締役を辞任した者が、
登記申請権者である当該株式会社の代表者に対し、
辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき
明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情が存在する場合には、
右の取締役を辞任した者は、同法14条の類推適用により、
善意の第三者に対して当該株式会社の取締役でないことをもって
対抗することができない結果、同法266条ノ3第1項前段にいう
取締役として所定の責任を免れることはできないものと解するのが相当である。
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