所得税の更正が国家賠償法上違法でないとされた事例
(平成5年3月11日最高裁)
事件番号 平成1(オ)930
この裁判は、
所得税の更正が国家賠償法上違法でないとされた事例です。
最高裁判所の見解
税務署長のする所得税の更正は、
所得金額を過大に認定していたとしても、
そのことから直ちに国家賠償法1条1項にいう
違法があったとの評価を受けるものではなく、
税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を
認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき
注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと
認め得るような事情がある場合に限り、
右の評価を受けるものと解するのが相当である。
以上によって本件をみるのに、被上告人は、
本件係争各年分の所得税の申告をするに当たり、
必要経費につき真実より過少の金額を記載して申告書を提出し、
さらに、本件各更正に先立ち、税務職員から
申告書記載の金額を超える収入の存在が発覚していることを
告知されて調査に協力するよう説得され、
必要経費の金額について積極的に主張する機会が
与えられたにもかかわらず、これをしなかったので、
奈良税務署長は、申告書記載どおりの必要経費の金額によって、
本件各更正に係る所得金額を算定したのである。
してみれば、本件各更正における所得金額の過大認定は、
専ら被上告人において本件係争各年分の申告書に
必要経費を過少に記載し、本件各更正に至るまで
これを訂正しようとしなかったことに起因するものということができ、
奈良税務署長がその職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく
漫然と更正をした事情は認められないから、
48年分更正も含めて本件各更正に国家賠償法1条1項にいう
違法があったということは到底できない。
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