消滅時効完成後における債務の承認と当該時効援用の許否
(昭和41年4月20日最高裁)
事件番号 昭和37(オ)1316
この裁判では、
消滅時効完成後における債務の承認と
当該時効援用の許否について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
案ずるに、債務者は、消滅時効が完成したのちに
債務の承認をする場合には、
その時効完成の事実を知っているのはむしろ異例で、
知らないのが通常であるといえるから、
債務者が商人の場合でも、
消滅時効完成後に当該債務の承認をした事実から
右承認は時効が完成したことを知って
されたものであると推定することは
許されないものと解するのが相当である。
したがって、右と見解を異にする当裁判所の判例は、
これを変更すべきものと認める。
しからば、原判決が、上告人は商人であり、
本件債務について時効が完成したのち
その承認をした事実を確定したうえ、
これを前提として、上告人は本件債務について
時効の完成したことを知りながら右承認をし、
右債務について時効の利益を放棄したものと推定したのは、
経験則に反する推定をしたものというべきである。
しかしながら、債務者が、自己の負担する債務について
時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、
時効完成の事実を知らなかったときでも、
爾後その債務について
その完成した消滅時効の援用をすることは
許されないものと解するのが相当である。
けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、
時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、
相手方においても債務者はもはや
時効の援用をしない趣旨であると考えるであろらから、
その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、
信義則に照らし、相当であるからである。
また、かく解しても、永続した社会秩序の維持を目的とする
時効制度の存在理由に反するものでもない。
そして、この見地に立ては、前記のように、
上告人は本件債務について時効が完成したのち
これを承認したというのであるから、
もはや右債務について右時効の援用をすることは
許されないというわざるをえない。
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