総有権確認請求訴訟の原告適格
(平成6年5月31日最高裁)
事件番号 平成3(オ)1724
この裁判では、
総有権確認請求訴訟の原告適格について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
村落住民が入会団体を形成し、
それが権利能力のない社団に当たる場合には、
当該入会団体は、構成員全員の総有に属する不動産につき、
これを争う者を被告とする総有権確認請求訴訟を追行する
原告適格を有するものと解するのが相当である。
けだし、訴訟における当事者適格は、特定の訴訟物について、
誰が当事者として訴訟を追行し、また、
誰に対して本案判決をするのが紛争の解決のために必要で
有意義であるかという観点から決せられるべき事柄であるところ、
入会権は、村落住民各自が共有におけるような持分権を有するものではなく、
村落において形成されてきた慣習等の規律に服する団体的色彩の濃い
共同所有の権利形態であることに鑑み、
入会権の帰属する村落住民が権利能力のない社団である
入会団体を形成している場合には、当該入会団体が当事者として
入会権の帰属に関する訴訟を追行し、
本案判決を受けることを認めるのが、このような紛争を複雑化、
長期化させることなく解決するために適切であるからである。
そして、権利能力のない社団である入会団体の代表者が
構成員全員の総有に属する不動産について
総有権確認請求訴訟を原告の代表者として追行するには、
当該入会団体の規約等において
当該不動産を処分するのに必要とされる総会の議決等の
手続による授権を要するものと解するのが相当である。
けだし、右の総有権確認請求訴訟についてされた
確定判決の効力は構成員全員に対して及ぶものであり、
入会団体が敗訴した場合には
構成員全員の総有権を失わせる処分をしたのと
事実上同じ結果をもたらすことになる上、
入会団体の代表者の有する代表権の範囲は、
団体ごとに異なり、当然に一切の裁判上又は
裁判外の行為に及ぶものとは考えられないからである。
以上を本件についてみるのに、記録によると、
上告人A1管理組合は、
a町の地域に居住する一定の資格を有する者によって
構成される入会団体であって、規約により代表の方法、
総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定しており、
組織を備え、多数決の原則が行われ、
構成員の変更にかかわらず存続することが認められるから、
右上告人は権利能力のない社団に当たるというべきである。
したがって、右上告人は、
本件各土地が右上告人の構成員全員の総有に属することの
確認を求める訴えの原告適格を有することになる。
また、右上告人の代表者である組合長Dは、
訴えの提起に先立って、本件訴訟を追行することにつき、
財産処分をするのに規約上必要とされる総会における議決による
承認を得たことが記録上明らかであるから、
前記の授権の要件をも満たしているものということができる。
前権利能力のない社団である入会団体において、
規約等に定められた手続により、
構成員全員の総有に属する不動産につきある
構成員個人を登記名義人とすることとされた場合には、
当該構成員は、入会団体の代表者でなくても、
自己の名で右不動産についての
登記手続請求訴訟を追行する原告適格を
有するものと解するのが相当である。
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