差止請求
(平成7年7月7日最高裁)
事件番号 平成4(オ)1504
この裁判では、
一般国道等の道路の周辺住民から
その供用に伴う自動車騒音等により
被害を受けているとして
右道路の供用の差止めが請求された場合につき
右請求を認容すべき違法性があるかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
原審は、その認定に係る騒音等が
ほぼ一日中沿道の生活空間に流入するという侵害行為により、
そこに居住する上告人らは、騒音により
睡眠妨害、会話、電話による通話、家族の団らん、
テレビ・ラジオの聴取等に対する妨害及び
これらの悪循環による精神的苦痛を受け、また、
本件道路端から20メートル以内に居住する上告人らは、
排気ガス中の浮遊粒子状物質により洗濯物の汚れを始め
有形無形の負荷を受けているが、他方、本件道路が
主として産業物資流通のための地域間交通に相当の寄与をしており、
自動車保有台数の増加と貨物及び旅客輸送における
自動車輸送の分担率の上昇に伴い、その寄与の程度は
高まっているなどの事実を適法に確定した上、
本件道路の近隣に居住する上告人らが現に受け、
将来も受ける蓋然性の高い被害の内容が
日常生活における妨害にとどまるのに対し、
本件道路がその沿道の住民や企業に対してのみならず、
地域間交通や産業経済活動に対して
その内容及び量においてかけがえのない多大な
便益を提供しているなどの事情を考慮して、
上告人らの求める差止めを認容すべき
違法性があるとはいえないと判断したものということができる。
道路等の施設の周辺住民から
その供用の差止めが求められた場合に差止請求を
認容すべき違法性があるかどうかを判断するにつき
考慮すべき要素は、周辺住民から損害の賠償が求められた場合に
賠償請求を認容すべき違法性があるかどうかを判断するにつき
考慮すべき要素とほぼ共通するのであるが、
施設の供用の差止めと金銭による賠償という
請求内容の相違に対応して、
違法性の判断において各要素の重要性を
どの程度のものとして考慮するかにはおのずから相違があるから、
右両場合の違法性の有無の判断に差異が
生じることがあっても不合理とはいえない。
このような見地に立ってみると、
原審の右判断は、正当として是認することができる。
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