リラックス法学部 判例集 >民法 代理(100条~117条) 判例集

 

(代理行為の要件及び効果)

第九十九条 代理人がその権限内において

本人のためにすることを示してした意思表示は、

本人に対して直接にその効力を生ずる。

2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

 

(本人のためにすることを示さない意思表示)

第百条 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、

自己のためにしたものとみなす。

ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、

又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

 

 

100条関連判例

・代理人BがAを代理する意思で、

Aの名前を示さずに、Cにお金を貸した場合、

Cが、貸主が代理人B以外の第三者である事を

知っていたと認められるときは、

消費貸借は本人たる貸主Aとの間に成立する。

 

(代理行為の瑕疵)

第百一条 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又は

ある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき

過失があったことによって影響を受けるべき場合には、

その事実の有無は、代理人について決するものとする。

 

2 特定の法律行為をすることを委託された場合において、

代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、

自ら知っていた事情について

代理人が知らなかったことを主張することができない。

本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

 

 

101条関連判例

・使用人の権限外の行為による

法人の不当利得が問題とされる場合、

代理権のない使用人が悪意だからといって、

法人の悪意とする事はできない。

 

(復代理人の権限等)

第百七条 

復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。

 

2 復代理人は、本人及び第三者に対して、

代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

 

107条関連判例

・復代理人は、特別の事情がない限り、

相手方から受領した物を本人に対して

引き渡す義務プラス代理人に対しても

これを引き渡す義務を負うが、

代理人に引き渡したときは、

本人に対する受領物引渡義務も消滅する。

 

(自己契約及び双方代理)

第百八条 

同一の法律行為については、相手方の代理人となり、

又は当事者双方の代理人となることはできない。

ただし、債務の履行及び本人が

あらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

 

  108条関連

・和解交渉のための代理人の選任を

相手方に委任する委任契約は無効。

(リラックス・ヨネヤマからコメント…

モメている相手に自分の代理人を選んでもらおうと

する人なんかいるのか?

と思うかもしれませんが、

おそらく契約書にこういう事項を

盛り込まれていてハンコを

押してしまったのではないでしょうか?

146条に「時効の利益はあらかじめ放棄できない」

という規定がありますが、

これも、もしこれができるならば

金貸しの契約書には絶対に

「時効はあらかじめ放棄するものとする」

という項目が盛り込まれるはずです。

 

お金を借りる立場の人はどうしても不利なので、

どんな項目があってもとりあえず

ハンコを押してしまうでしょう。

同様に

「借主の代理人は貸主側が

選任するものとする」

と盛り込まれたら、

やりたい放題になってしまいますからね…)

 

・登記申請については、それによって

新たな利害関係が創造されるのではないから、

同一人が登記権利者、

登記義務者双方の代理人となってもOK。

(リラックス・ヨネヤマからコメント…

これがNGだと司法書士の仕事ができなくなります)

 

(代理権授与の表示による表見代理)

第百九条 

第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、

その代理権の範囲内において

その他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。

ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、

又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

 

民法109条関連判例

・代理権を授与した表示者が、

相手方の悪意または過失を立証した時は

本条の責任を免れる。

(最判昭41・4・22)

 

・本条は法定代理には適用がない。

(大判明39・5・17)

 

・関係書類の交付を受けた者がそれらを濫用し、

さらに表示以上の代理行為をした場合には、

本条と110条が適用される。(最判昭45・7・28)

 

 
(権限外の行為の表見代理)

第百十条 前条本文の規定は、

 
代理人がその権限外の行為をした場合において、
 
第三者が代理人の権限があると
 
信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
 
 
民法110条関連判例

・本条の表見代理は、

代理権の範囲を超えて行動する場合に

生ずるものであるので、

前提として何らかの代理権が与えられている事が必要である。

(最判昭30・7・15)

 

・従前の代理人がなお代理人と称して

従前の代理権の範囲に属しない行為をなした場合、

この代理権の消滅につき善意無過失の相手方が、

その自称代理人の行為につき、権限があると信ずるべき

正当の理由を有するときは、本人はその責任を負う。

(最判昭32・11・29)

 

・本条は、代理人の行為が

その代理権のある事項と関係が

あるか否かにかかわらず適用される。

 

本条の基本代理権は

私法上の行為についての代理権であるべきである。

印鑑証明書下付申請行為という

公法上の行為についての代理権を有する者がなした

抵当権設定という私法上の行為には、

本条の適用はない。(最判昭39・4・2)

 

・登記申請を行為を委任された者が、

その権限を超えて第三者との間に行為をした場合、

登記申請行為自体は公法上のものでも、

それが私法上の取引行為の一環として、

契約による義務履行のためになされたものであるときは

その権限を基本代理権として、

本条の表見代理が成立する。(最判昭46・6・3)

 

・代理人が直接本人の名で

権限外の行為をした場合、相手方がその行為を

本人自身の行為であると信じたことにつき

正当な理由がある場合に限り、

本条を類推適用して本人がその責を負う。

(最判昭44・12・19)

 

・本条による本人の責任は

第三者が代理権ありと信ずるにつき、

本人の過失の有無は問題にならず

本人は無過失でもその責任を負う。

(最判昭34・2・5)

 

・本人から実印の交付を受けた者が

権限踰越の代理行為をした場合には、特別の事情がない限り、

相手方には代理権がありと

信ずるべき正当な理由があるといえる。

(最判昭35・10・18)

 

・代理人と称する者が本人の白紙委任状、

印鑑証明書および取引の目的とする

不動産の登記済権利証を所持しているときでも、

その者の代理権限の有無について

疑念を生じさせるに足りる事情がある場合は、

相手方が代理権の有無につき調査を怠りその者に

代理権があると信じても、

そのように信じた事に過失がないとはいえない

(最判昭53・5・25)

 

(代理権消滅後の表見代理)

第百十二条 

代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。

ただし、第三者が過失によって

その事実を知らなかったときは、この限りでない。

 

 

 民法112条関連判例

・本条の表見代理が成立するためには、相手方が代理権の消滅前に、

必ずしも代理人と取引した事がある事を要するものではない。

 過去の取引の有無は相手方の善意無過失を

認定する一資料にすぎない

 (最判44・7・25)

 

(無権代理)

第百十三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、

本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、

その相手方に対抗することができない。

ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

 

 

民法113条関連 判例

・無権代理人Aが

B所有の土地をCに賃貸した後、

Bからその土地を譲り受けて

 所有権を取得した場合、

Cとの賃貸借はAについて

その効力を生ずるものとする。

 (最判昭34・6・18)

 

無権代理行為の追認は、

相手方、無権代理人

どちらに対してしてもよい

無権代理人に対して

追認の意思表示をした場合、

相手方がその事実を知らなければ

これを相手方に対抗できないが、

相手方から追認の事実を

主張する事は妨げない。

 (最判昭47・12・22)

 

無権代理人に本人を相続した場合

その無権代理行為は当然に有効となる。

本人が無権代理人を相続した場合

被相続人の無権代理行為は

本人の相続により、

当然には有効とはならない

(最判昭37・4・20)

 

・無権代理人が本人所有の土地を担保にして

金銭を借り受けることを第三者に依頼した後、

本人を相続した場合、

この依頼を受けた者は

本人を代理する権限を

付与されたものと解する。

(最判昭40・6・18)

 

・無権代理人を

本人とともに相続した者が、

さらに本人を相続した場合、

当該相続人は本人の資格で

無権代理行為の追認を

拒絶することはできない。

(最判昭63・3・1)

 

無権代理人が、

他の相続人とともに本人を相続した場合

無権代理行為の追認は

共同相続人全員が共同して行う必要がある。

無権代理人の相続分に相当する部分についても

無権代理行為が当然に有効になることはない

 (最判平5・1・21)

 

・本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合、

その後相続によって本人と

無権代理人の地位が

同一人に帰属することになっても

無権代理行為が有効になるものではない。

 

(無権代理行為の追認)

第百十六条 追認は、別段の意思表示がないときは、

契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。

ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

民法116条関連判例

・ある物権につき

何ら権利を有しないものが、

これを自分のものとして処分した場合、

真実の権利者が後日

これを追認した場合は本条の適用がある。

(最判昭37・8・10)

 

・親権者が826条に違反して、

自己の債務のために子との共有不動産の

売買予約を締結するという、

親権者と子の利益相反行為につき

法定代理人としてなした行為は、

113条の無権代理行為にあたる。

この行為は成年に達した子の追認によって

その成立の時にさかのぼって

効力を生ずる。

(最判昭46・4・20)

 

(利益相反行為)

第八百二十六条 

親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、

親権を行う者は、その子のために特別代理人を

選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、

その一人と他の子との利益が相反する行為については、

親権を行う者は、その一方のために特別代理人を

選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

 

・養子縁組の追認の場合は

事実関係を重視する身分関係の本質に鑑み、

本条但書の規定は類推適用されない。

(最判昭39・9・8)

 

本条の第三者とは、追認の遡及効によって

権利を侵害されるすべての第三者をいう

受領権を有しないものが売買代金を受領した後に、

この代金債権につき

転付を受けた者がある場合に、

売主がこの無権受領行為を追認して

転付を受けた者の権利を

害することは許されない。

(大判昭5・3・4)

 

・取り消すこともできる行為についての

法定追認を定めた125条の規定は、

無権代理行為の追認には

類推適用されない。

 (最判54・12・14)

 

(法定追認)

第百二十五条 

前条の規定により追認をすることができる時以後に、

取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、

追認をしたものとみなす。

ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

一 全部又は一部の履行

二 履行の請求

三 更改

四 担保の供与

五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡

六 強制執行

 

 

(無権代理人の責任)

第百十七条 

他人の代理人として契約をした者は、

自己の代理権を証明することができず、かつ、

本人の追認を得ることができなかったときは、

相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が

代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、

若しくは過失によって知らなかったとき、

又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

 

 

民法117条関連判例

・無権代理人の本条による損害賠償責任は

履行に代わるべき損害の賠償責任である。

その賠償の範囲は

信頼損害の範囲にとどまるものでない

また不法行為による賠償責任ではないから

三年の消滅時効にもかからない。

 (最判昭32・12・5)

 

・表見代理の要件と

本条の要件の両者が存する場合、

相手方は前者の主張をせずに、

本条の無権代理人の責任を問う事ができる。

 (最判33・6・17)

 

・株式会社設立準備中の者が、

その設立登記前に

その会社の代表取締役として、

第三者と会社の設立に関する行為に

属しない契約を締結したときは、

本条の類推により、この第三者に対する責めに任ずる。

(最判昭33・10・24)

 

・Aの代理人と称して金銭を借用し、かつ、

自らAのために連帯保証をなした者が、

代理権の不存在を主張して、

連帯保証債務の成立を否定する事は

特別の事情のない限り、

信義則上許されない。

(最判昭41・11・18)

 

・無権代理人を相続した本人は、

無権代理人が本条により

相手方に債務を負担

していたときには、

無権代理行為について

追認を拒絶できる地位にあった事を

理由として、この債務を免れることができない。

 (最判昭48・7・3)

 

本条二項の相手方の過失は重大な過失である必要はない

 (最判昭62・7・7)

 

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